MTG カード与太話: タルキール覇王譚より「内向きの目の賢者」「龍爪のスーラク」


内向きの目の賢者/Sage of the Inward Eye

ジンかつウィザード。意外にもこの組合せのクリーチャーは初めらしい。まあ、そもそもジン自体が魔法使いを兼ねるような存在でもあるので、わざわざウィザードと名乗る必要がない気もする。そういう意味では、ウィザードと明示したことに何か意味があるのかもしれない。また、ジンもウィザードも青に多い種族なので、青単色のクリーチャーとして存在してても良さそうなのに、なぜか多色にて初登場。能力的に見ても、絆魂あたりに白っぽさはあるものの、赤い要素はほとんどなかったりして、多色の意味がいまいちわからない。そもそも赤とその対抗色という組合せのはずなのに、赤っぽい要素が一番少ないというのはちょっと面白い。なお、絆魂を持ってたり与えられるジンというのはいないけど、ウィザードにはいくらかいる。そのあたりでウィザードっぽさを主張しているのだろうか。

過去の 3/4 飛行のクリーチャーで似ているものには稲妻の天使/Lightning Angelがいる。色が同じでコストはこれより 1 マナ少ないながら、飛行に加えて速攻と警戒を持っている。速攻と警戒よりも、条件付きながら自分のクリーチャーに絆魂を与える能力のほうが、1 マナ分強いと判断されているらしい。もうひとつ似たのに冷静な天使/Stoic Angelがいる。これは、色が1色違うもののコストが1少なくて、飛行に加えて警戒と、煙幕/Smokeのような能力を持っている。それでも 1 マナ少ないのは、アンタップを制限する能力がデメリットと判断されているぽい。一方でテューンの大天使/Archangel of Thune は 3/4 飛行に絆魂がつき、さらにライフを得るたびに +1/+1 カウンターを置ける能力がついて、ダブルシンボルながら 5 マナと同じコストに設定されている。神話レア補正にしても、これはなかなか強さに差がある感じ。修道院のガーゴイル/Abbey Gargoylesはトリプルシンボルで、3/4 飛行とプロテクション(赤)が付いていてレアリティは同じ。かなり昔のカードながら、これと比べたら(環境にもよるけど)こっちのほうが良い。なかなか、このあたりのバランスの調整がどうなっているのかは、興味がつきないところ。


龍爪のスーラク/Surrak Dragonclaw

何この強いの。青が発狂しそうな能力の詰め合せセットになっていて、これは使うしかない。自身がトランプル持てないのが玉に瑕だけど、それがほとんど誤差にしかならないような強さ。爪鳴らしの神秘家みたいなカードを使って 3-4 ターン目くらいに出たら、暴れられそうな感じ。同コストの 熊の仲間/Bear’s Companion との差が凄い。過去の同コストのクリーチャーには二つ反射のリクー/Riku of Two Reflectionsがいる。こちらも強力なカードではあるものの、色さえあれば入れといて問題なし的なスーラク君にくらべると、汎用性という面でかなり差がある感じがする(注1)。本体のサイズが 3 倍違うというのも何げに大きそう。これは何かデッキを考えるしかない。ブロック構築で・・・

ちなみに Dragon Claw というと、過去にドラゴンの爪/Dragon’s Clawというカードがあるけど、能力的に何も関係がなかった。せいぜい、ドラゴンの爪/Dragon’s Claw を出してからこれを唱えたら 1 ライフ得られる、という程度の関連性しかないくて残念。装備品なら、強引に装備させるギャグとかできたのに。名前のほうでも、Surrakar(サラカー)という種族がゼンディカーにいたけど、これは両生類っぽい生物な上に色も青黒だったりするのでスラーク君とは関係がないようだ(注2)。スペルは全然違うど、雰囲気的には最後のトロール、スラーン/Thrun, the Last Trollの、青シネシネ団的な系統に近い感じがする(注3)。ただし、スラーン君が自分だけを守る能力を持っているのに対して、スーラク君は自分以外のクリーチャーを守ったり強化できる点でかなり違っている。このあたりがティムールのリーダーになれた所以だろうか。


  • (注1) EDHのことは考慮してない。
  • (注2) サラカーの呪文刃/Surrakar Spellbladeのインスタント呪文かソーサリー呪文を唱えるたびに能力が誘発する部分は似てるとも言えなくもないけど、ほとんどこじつけよね。
  • (注3) スーラク君自身も青いのに・・・そのあたりで、呪禁がなかったりして青に対する甘さがあるのかも。

MTG カード与太話: タルキール覇王譚より「軍族の解体者」「熊の仲間」


軍族の解体者/Butcher of the Horde

まさかの白いデーモン。多色とはいえ、白いデーモンというのは初めてらしい。青いデーモンは、多色(黒入り)であれば 4 体ほど存在しているが、緑のデーモンは 1 体もいない。赤いデーモンは多色であれば沢山いるけど、赤単色のデーモンは野蛮な地の鬼/Oni of Wild Places血塗られしもの、死祭/Shimatsu the Bloodcloakedの二体だけ。そして、警戒を持つことができるデーモンも、これが初めてらしい。ちなみに速攻を持つデーモンはいくらかいるけど、絆魂を持つデーモンは他には グリセルブランド/Griselbrand しかいないようだ。こうして見ると、いろいろと規格外な部分が多く、なぜデーモンにされたのかはよくわからない。

カード的には 4 マナ 5/4 飛行と、素でもなかなかに強い。普通なら 3 色は辛いところだけど、このブロックではさほど苦労することなく出せそう。能力については、警戒はともかく、速攻も絆魂も使えそうな感じ。それほど繰替えし使う能力でもない上に、特に能力を使わなくても強いから、とりあえずフィニッシャーとして入れとけ的な感じでデッキに入てといても問題なさそう。マルドゥ色でデッキを組む場合には高確率でデッキに入って来ると思う。というか、デーモンのデはデメリットのデ、という時代が遠い昔になったもんですな・・・。


熊の仲間/Bear’s Companion

この世界で熊といえば 2/2 と決まってるのに、なぜか人間のほうが熊 (2/2) で、呼びだされる本体(?)の熊は 4/4 というおかしな状態になっている。4/4 の熊トークンなるものも初出だし(注1)、4/4 の熊クリーチャーというのも過去に存在してない。一番巨大な熊でも金色熊/Golden Bearの 4/3 が最大だった。これは、あきらかにこの世界のルールを破っている。という状況証拠から推測するに、実は、2/2 のほうは絵に描かれているクマに見えるほうで(実は人間が着ぐるみを着ている)、4/4 のほうが手前にいる「熊さん」という名前の人間に違いない。カードには、どっちが本体とも書いてないもんね。・・・ただ、熊トークンの絵がどうみてもやっぱり熊だけど、そのへんは気にしないということで・・・。

カード的には、5 マナで 2/2 と 4/4 が二体出るというもの。コストパフォーマンスそうは悪くないけど、本体もお供も除去耐性もなければ回避能力もなく、クリーチャータイプに大きなメリットがあるわけでもない(人間というのは多少有利なものの・・・)という、なかなか使いどころが悩ましい感じになっている。構築では出てこないよねえ。リミテッドでも色が合わないとなかなか出しにくいし、出しても突破力があんまり無いのでどうしたものかな、といったところ。戦場とどこかを往復すれば 4/4 トークンを量産できるけど、その仕掛けをわざわざ組むくらいなら他のカードを選びそう。赤や青が入ってる意味もあんまり無い感じ。今後、熊トークンが何かすごいことに化けるとかいうことでもない限り、しばらくは放置されてしまいそうな雰囲気はある。ただ、とりあえず何かのギャグのネタにはなりそうな気もするので、1枚くらいは手元に置いておきたい。


(注1) 従来の熊クリーチャートークンは 2/2 だった。

MTG カード与太話: タルキール覇王譚より「ラクシャーサの死与え」「跳ね返す掌」


ラクシャーサの死与え/Rakshasa Deathdealer

猫でデーモンという、かなりニッチな需要に応えた初めてのカード(注1)。これまでに猫かつゾンビとか、猫かつ吸血鬼なんてのはいたけど、猫でデーモンというのはいなかったらしい。しかし、絵的には全然猫っぽさもデーモンっぽさもないので、どのくらいニーズに答えられたのかは謎。死与え(Deathdealer)という単語も初めてのようなので、猫デーモンを表す名詞として作られたのかも。何にせよ、猫デッキの一翼を担うことにはなりそう。(注2)

カード的には危険な影/Perilous Shadow と ルートワラ/Rootwalla を足して 2 で割ったような感じというか、ダークリング・ストーカー/Darkling Stalker に緑を足して 2 マナほど安くなったけどパンプアップに緑が必要になったというか、ロッテスのトロール/Lotleth Troll が手札を捨てなくていい代わりに1ターン限り強化できるようになった、というようなクリーチャー。2 マナで +2/+2 できるのにルートワラ/Rootwalla みたいなパンプアップの回数制限がなく、いざとなったら再生できるというのは悪くない。ただ、パンプアップと再生に使うマナが共通しているところに、やや使いにくい感じがする。黒黒で +2/+2、緑緑で再生(またはその逆)、くらいならかなり良かった気がするけど、それじゃ強すぎということなのかな。


跳ね返す掌/Deflecting Palm

ダメージ反射/Reflect Damage が 3 マナ減ったら、自分に与えられるダメージだけ反転できるようになった、というようなカード。クリーチャーへのダメージは防げないものの、自分への戦闘ダメージや X 火力などの直撃は跳ね返せる。2 マナなら、それなりに使えるような気はするけど・・・この手の受動的なカードは構築にはなかなか入りにくいから、リミテッドで活躍するくらいかなあ。場合によっては、サイド要員くらいにはなりそうな気もする。絵がなかなか格好いいし、使うタイミングによってはかなり爽快になれる可能性もあるので、どこかでは一度使ってみたい。

カード名の「跳ね返す」に相当する部分の英語は Deflecting で、跳ね返すというよりは「向きを変える」というイメージに近い。発生源から自分に向かうダメージの向きを、コントローラに変更するというニュアンスだよねきっと。でも Reflect という単語の入っている ダメージ反射/Reflect Damage も、発生源にダメージを戻すわけでもなかったりする。Reflect という単語の入ってるカードは沢山あるけど、Deflect という単語の入っているカードは少なくて、これの他には 偏向/Deflection と 神聖なる反撃/Divine Deflection しかないらしい。偏向/Deflection は呪文の「向きを変える」効果があり、神聖なる反撃/Divine Deflection はこのカードのように、ダメージの向きを変える効果をもっている。でも Reflecting Mirror なんかは 偏向/Deflection みたいな能力を持っていたりと、あんまり統一されていない感じ。このあたり、英語的なニュアンスでも微妙な差なんだろうか・・・


  • (注1) さらにラクシャーサの大臣という猫デーモンなカードが後から発表されたので,猫デーモンは2枚になった.
  • (注2) そんなのがあるのかは謎