まさかの時のボードゲーム: Android Netrunner (2) コーポレーションのランナーへの対策

前の記事で説明したように、コーポレーションがポイント欲しさに何も考えず遠隔サーバを作っても、ランナーは好きなサーバに「ラン」して「計画書」を盗んでしまう。これではコーポレーションに勝ちがない。そこで、コーポレーション側には「計画書」を盗まれないようにするための対策方法が、いくつか用意されている。

対策1: 罠の遠隔サーバをつくる

遠隔サーバは手札のカードを「裏向き」に出して作ると説明したけど、「遠隔サーバ」として出せるカードには、「計画書」以外に「資財(Asset)」というカードがある。この「資財」には計画ポイントがない。そのため、ランナーがアクセスした先が「資財」だったときは、得点することができない。

arn6

これが「資財」カード。「資財」には罠が仕込まれていることが多い。たとえば上の写真のカードはいずれも、アクセスしてきたランナーに「ダメージ」を与えることができる。ランナーは、ダメージを受けると手札を捨てなければならない。そして、手札の枚数を越えるダメージを受けるとランナーは敗北するというルールがある、

つまり、コーポレーションは罠カードで作った「遠隔サーバ」にランナーがアクセスするように誘導し、ダメージを与えてランナーを倒すこともできるわけだ。

対策2: アイス(防御壁)をつくる

コーポレーションは、サーバのカードの前に裏向きに「アイス」というカードを置くことで、電子的な防御壁を作ることができる。この「アイス」は横向きに置いて、サーバと区別する。アイスはサーバの前に何枚でも置くことができる。

arn8

ランナーがランしたサーバの前にアイスが置かれているときは、サーバにアクセスする前に、サーバの前に置かれた全ての「アイス」のカードを突破しなければならない。もしアイスが10枚あったら、10枚全部を突破しないとサーバにアクセスできない、ということになる。

「アイス」には「サブルーチン」と呼ばれる、ランナーを撃退するための能力がついている。なので、ランナーが何の工夫もなく「アイス」のついてるサーバに侵入を試みても、簡単に撃退されてしまう。下の写真のように、アイスのカードには「矢印」のついた項目があって、それらひとつひとつが「サブルーチン」を示している。

arn9

たとえば、左のカードには単に「ランを終了する」と書かれたサブルーチンがある。ランナーがランしたサーバに、このサブルーチンを持つアイスがあれば、ラン自体を強制的にキャンセルされてしまう。逆に言えば、コーポレーションはこのアイスをサーバに付けることで、サーバにアクセスされることを防ぐことができる。

ただしアイスは裏向きのままでは機能せず、ランナーを素通ししてしまう。「アイス」のサブルーチンを機能させてランナーのサーバーへのアクセスを阻止するためには、アイスを表に向ける(レゾすると言う)操作をする必要がある。

表に向けるためには、カードに書かれたコストを払わなければならない。コストは左上に書かれており、たとえば上の左の「アイス」なら、表を向けるには 3 クレジット払う必要がある。同様に、中央のアイスのコストは 3、右のアイスのコストは 4 である。

arn11

このアイスの場合はコストが 3 なので、コーポレーションは表向きにする(レゾする)ために 3 クレジットを支払う必要がある。アイスは、このように表に向けることで、はじめてサブルーチンを起動することができる。アイスは一度表向きにすればそのまま表の状態で残るので、以後ランナーが何度ランしてきても、コストを払うことなくサブルーチンを起動できる。

ちなみに「クレジット」というのは、コーポレーションやランナーが能力を使用したり、カードを出したり(インストールしたり)するときに支払うお金みたいなもので、得点である「計画ポイント」とは違う。クレジットはランナーにもコーポレーションにもゲーム開始時にあらかじめ配られる。クレジットを増やすには、カードを使ったり「アクション」を実行する必要がある。これらについては後述する。

arn9

なお、「ランの終了」のサブルーチンがついておらず、単にランナーにダメージを与えるだけのアイスもある。右のアイスには「3ネットダメージを与える」というサブルーチンしかないので、ランナーがサーバに侵入することを直接的には防げない。しかし、ダメージを与えてランナーの手札がなくなってしまえば、ゲームに勝つことができる。こうした、罠のような機能を持つアイスもある。

サブルーチンが複数あるアイスもある。中央のアイスは「ランを終了する」以外にも、ランナーにクリック(行動力)を失わせる機能がついている。アイスのサブルーチンは、ランナーがアクセスしてきたときにすべて起動できるので、このアイスはサーバーへのアクセスを阻止する機能だけでなく、ランナーの行動力を削るという機能をあわせもっているわけだ。


トップページに戻る / 次の記事を読む

まさかの時のボードゲーム: Android Netrunner (1) ゲームの基本

anr1

Android Netrunner は二人用のデッキを用いるカードゲーム (Living Card Game: LCG) で、プレイヤーはコーポレーション(サーバの防御者)とランナー(サーバへの侵入者)のいずれかを担当する。

コーポレーションは、サーバを使って「計画ポイント(アジェンダポイント)」を作る能力をもっている。コーポレーションは 7 ポイント作ることができれば勝利となる。「計画ポイント」は、電子的な価値のある情報のようなもので、今風にいえば「ビットコイン」みたいなものだ(と思う)。これに対して、「計画書」はビットコインを作るプロジェクトの計画書のようなもので、決められた回数だけアドバンス(計画を実行)させると、カードに書かれている「計画ポイント」を得ることができる。

一方で、ランナー(侵入側)はサーバに侵入する能力を持っており、サーバから「計画書」を盗むことで得点できる。ランナーは、コーポレーションから7 ポイント盗めたら勝ちになる。ランナー側は単に「計画書」を盗めばよく、「アドバンス」という操作をする必要はない。そのかわり(?)、自力では「計画書」を作ることができない。

arn2

上の写真の、左が「ランナー」を示す ID カードで、右が「コーポレーション」を示す ID カード。ID カードはデッキには入れず、最初から場に出して使う。ランナー側もコーポレーション側も複数の種類の ID カードがあり、カードによって能力が異なっている。また、使用する ID カードによってデッキに入れられるカードの種類にも制約がつく。だから、デッキを組むよりも前に、どの ID カードを使うかを選択する必要がある。

arn3

これが「計画書」カード。コーポレーション側のデッキにしか入れられない。コーポレーションはこのカードに対して「アドバンス」という操作をして得点にし、ランナーはこのカードをコーポレーションから奪って得点にする。

カードの右上に、ポイントを得るまでに必要になるアドバンスの回数が書かれている。これらのカードの場合、ポイントを得るには「4回」のアドバンスが必要ということを示している。

カードの中段左側に書かれている数字が「計画ポイント」で、コーポレーションは計画書を完成させると 2 ポイント得られ、ランナーはこのカードを盗むことで 2 ポイント得られることを示している。

コーポレーション(防御側)の戦略

コーポレーションには、最初から R&D、HQ、アーカイブという3種類のサーバがある。といっても、これらは「山札」「手札」「捨札」のことで、このゲームでは山札のことを「R&D」、手札のことを「HQ(ヘッドクオーター)」、捨札の束のことを「アーカイブ」と呼ぶことになっている。いずれにしろ、これらのサーバではビットコイン(計画ポイント)は作れない。

じゃあどこで作るかというと、「遠隔サーバ」というところで作ることができる。「遠隔サーバ」というのは、コーポレーションが自分の手番に、手札のカードを裏向きに出す(インストールすると言う)ことで作ることができる。

arn4

ランナー側からコーポレーション側の陣地を見ると、上の写真のようになる。山札の横に、裏向きに置かれたカードが「遠隔サーバ」である。この「遠隔サーバ」に対して、自分の手番のときに「アドバンス」という操作をすることで、計画ポイントを作ることができる。ちなみに、遠隔サーバはいくつでも作ることができる。

「アドバンス」という操作は「ビットコインを作る計画を実行する」というような意味だと思ってもらえば、だいたいあってる(気がする)。コーポレーションは、「遠隔サーバ」のカードに書かれている回数だけ「アドバンス」すると、カードに書かれたポイントの分だけコーポレーションの得点になる。

arn5

アドバンスした遠隔サーバには、円い「アドバンストークン」を置いて、何回アドバンスしたか分かるようにする。遠隔サーバは裏向きのままでもアドバンスできるし、何らかの理由で表向きの状態になっていてもアドバンスできる。

つまり、コーポレーションとしてはひたすら「遠隔サーバ」を作って「アドバンス」しまくれば勝てる、ということになる。

ランナー(侵入側)の戦略

一方、ランナーは自分では計画ポイント(ビットコイン)が作れない。その代わり、コーポレーションのサーバに侵入して「計画書」を盗み、ポイントを得ることになる。

ランナーは自分の手番に、コーポレーション側の好きなサーバを指定して「ラン」する(侵入を試みる)ことができる。ランに成功してサーバにアクセスできたとき、それが「遠隔サーバ」だったときは、コーポレーションはそのカードを表向きにしてランナーに見せる。

arn3

アクセスされたカードが上のような「計画書」だったときは、ランナーにカードを奪われてしまう。そして、表に書かれた「計画ポイント」の分だけ、ランナーがポイントを盗んだことになり、それがランナー側の得点になる。たとえば上のカードの場合は、いずれを奪った場合でも 2 ポイントがランナーの得点になる。取引所のサーバに侵入してビットコインを盗む、みたいなことを想像してもらえば、だいたいあってるかも。

だから、ランナーは「サーバ」にランして計画書を盗みまくることで勝利を目指す。


トップページに戻る / 次の記事を読む

まさかの時のボードゲーム: Star Wars Imperial Assault

スターウォーズの世界を舞台としたフィギュアを使う対戦型のボードゲームで、GM 的な役割りをするプレイヤーが帝国軍の全キャラを操作し、同盟軍は各プレイヤーがそれぞれ一人ずつのヒーローを担当して帝国軍と戦う。マップやフィギュアが最初から付いていて、戦闘のみに特化された TRPG という雰囲気のゲームで、同じ会社から発売されているディセント第二版というゲームと非常によく似ている。

ia1

上の写真は、3人プレイのチュートリアルのゲームをセットアップしたところ。手前側が帝国軍のプレイヤーで、左側に同盟軍のプレイヤー(2人分)がセットアップされている。中央は実際に戦闘をするマップで、複数のマップタイルを組合せて作るようになっている。灰色のフィギュアが帝国軍側のフィギュアで、ベージュ色のフィギュアが同盟軍のヒーローを表している。

ia2

同盟軍のヒーローのパラメータは、ヒーローのカードに書かれている。基本パラメータは Health (体力)、Endurance (耐久力)、Speed (移動力)、Defense (防御力) の 4 つ。右上には、戦闘などに使える特殊能力が書かれており、下の欄には各種のチェックに使うダイスの種類が書かれている。

ヒーローが戦闘などでダメージを受けると Health が減っていき、Health がゼロになるとヒーローカードを裏返す。裏面(負傷面)にも同じようにパラメータが書かれているけど、裏面はパラメータが若干下っていたり、能力が書かれていなかったりする。そして、裏目の Health もゼロになると、ヒーローは倒されてマップ上から除去される。

Endurance は特殊能力を使うときに消費するポイントで、ここに書かれた数値になるまでポイントを使うことができる。Speed はマップ上を1ターンの間に移動できるマスの数を示している。Defense は、敵から攻撃を受けたときに、防御判定につかうダイスの色を示している。このヒーローが防御する場合は、白のダイスをひとつ振ることを意味している。

右側のカードは「武器」のカードで、攻撃するときに使うダイスの種類や、耐久力を消費して使用できる特殊能力が書かれている。この武器の場合は、通常攻撃のときは緑と黄色のダイスをそれぞれ1つずつ振ることを意味している。カード中央には、攻撃用のダイスを振ったときに出た「稲妻」の目を消費することで使える特殊能力を示している。

ia3

帝国軍側はこんな感じ。同盟軍側に比べると、Health が圧倒的に低い。一方で、攻撃や防御についてはあまりかわらない。これだけ見ると帝国軍が不利に見えるけど、帝国軍側は同盟軍よりだいたいの場合は数が多い。

このゲームはターン制で、同盟軍プレイヤーと帝国軍プレイヤーが交互にフィギュアを操作するようになっている。各ターンには「移動」「攻撃」「体力や耐久力の回復」「トークンやドアなどを操作する」「カードに書かれた特殊能力を使う」という5つのアクションのうちから2つを選んで行動できる。

同盟軍と帝国軍のプレイヤーは、ターンを交互にプレイする。ただし、同盟軍プレイヤーが2人いる場合は、プレイ順序は「同盟軍1」「帝国軍」「同盟軍2」「帝国軍」、といった感じになる。たとえば、同盟軍のフィギュアが2人としたら、最初のターンにに同盟軍プレイヤー1が「自分の担当するフィギュア」を行動させ、次のターンは帝国軍プレイヤーが「同じグループ所属するフィギュア全部」を行動させる。そして、その次のターンには同盟軍プレイヤー2が「自分の担当するフィギュア」を行動させ、次のターンは帝国軍プレイヤーが「他の、同じグループに所属する全部のフィギュアを」行動させる、という具合になる。つまり、帝国軍側だけが同時にたくさんのフィギュアを動かすことがある、ということ。

こうやって、双方が全部のフィギュアを行動させたらラウンド終了となる。そして、帝国軍か同盟軍のいずれかのプレイヤー側が勝利条件を満たすまでラウンドを繰り返す。

ia4

次に戦闘について簡単に説明する。

このゲームでは、戦闘はダイスで解決する。上の写真では、帝国軍側の Stormtrooper (灰色の上側のフィギュア)が、同盟軍の Diala Passil を攻撃したところを示している。Stormtrooper の攻撃ダイスが「緑」「青」のふたつで、Diala Passil の防御ダイスは「白」ひとつなので、これらを相互のプレイヤーが振る。

この戦闘の場合、攻撃側と防御側が隣接していない(遠隔武器で攻撃している)ので、まずは出目から命中判定をする。命中判定については、ダイスに書かれている「数字」の合計が、攻撃側から防御側までの距離(マス目の数)以上であれば命中したことになる。この戦闘では、距離が 3 でダイスの結果が 5 (1+4) なので、命中したことになる。

次にダメージ判定をする。ダメージは、攻撃側のダイスにあるバツ印の合計から、防御側のダイスにある黒い三角形のようなマークの数だけ引く。この例では、攻撃側のバツ印の数は 2 で、防御側の三角形が 1 なので、ダメージは 1 (= 2-1) になる。

最後に、稲妻マークの解決をする。攻撃側のダイスに稲妻のマークがあるときは、そのマークの数だけカードに書かれた特殊能力を使用できる。ただし、防御側に円のマークがあるときは、そのマークの数だけ稲妻のマークがキャンセルされる。この例では、攻撃側の稲妻マークは 1 つで防御側の円マークが 1 つあるので、稲妻マークは相殺されてしまい特殊能力を使うことができない。

ia5

こうして戦闘の解決を終了し、最終的に与えられたダメージの分だけ、上の写真のようにダメージトークンをヒーローカードや帝国軍側のカード(配置カード)に置く。ダメージは累積していき、Health 以上のダメージを受けると帝国軍側ならフィギュアをマップ上から除去する。同盟軍側なら、先に書いたようにカードを裏面にするか、ヒーローをマップから除去する。

このミッションでは、同盟軍側は帝国軍側のフィギュアをすべて除去したら勝利になる。

ia6

帝国軍側はヒーローを全員倒すか、マップに配置されている2つのターミナルトークン(上の写真の左上にある撒き菱みたいなトークン)2つに、いずれかのフィギュアが到達したら勝利になる。ただ、同盟軍側のヒーローはやたら Health が高いので、ヒーローを倒すのは現実的ではない。なので帝国軍側は、大抵のミッションではヒーローを倒すよりも、ミッションで決められている勝利条件を満たすことを目指すことになる。

というか、どのミッションでも同盟軍側は何も考えずに行動していると、すぐに帝国軍に負けるくらいのバランスになってることが多い。同盟軍側は、やられることを気にするよりも、全力で帝国軍を倒しまくらないと勝てなかったりする。

・・・ルールはだいたいこんな感じで、これくらい分かればプレイできる感じ。あとはカードごとに書かれた特殊能力が沢山あったり、ミッションで指定されている特殊なルールがあったりする。

imperial3

なお、最初に書いたように、ディセント第二版とはルールがとてもよく似ている。このゲームのほうがよりルールが整理されて、シンプルになっているという感じ。コンポーネントもよく似ていて、上の写真のようにディセント第二版のフィギュアをこのゲームのフィギュアを混ぜて置いてみても違和感がない。

ia8

上側が Imperial Assault のダイスで、下はディセントのダイス。マークは違うけど、出目の感じはよく似ている。

imperial4

これは、ディセントのマップとこのゲームのマップを接続してみたところ。どっちがどっちか分からない程度には似ている。ディセントのマップやフィギュアを使って、勝手な拡張ミッションとか作れそうなくらい。というか、あっちの人ならすでにそういうの作ってそうよね。


何にせよベースはディセントなので、この手のゲームが好きなら十分楽しめると思う。むしろ、ディセントより遊びやすくなっている感じはする。拡張セットも発売されているし、Skirmish という2人用の対戦ルールも用意されているので、シナリオ不足で困るというような心配はなさそうだ。

ただ、ディセントがファンタジーというテーマだったのに対して、このゲームはスターウォーズというテーマなので、日本では一部地域でしか受けないかなあ。