MTG カード与太話: オリジンより「魂刃のジン」「ピア・ナラーとキラン・ナラー」


魂刃のジン/Soulblade Djinn

MTG の世界でジンというと、空を飛べて煙っぽい《マハモティ・ジン/Mahamoti Djinn》系のものと、空が飛べない上に何らかのデメリットを持つ《アーナム・ジン/Erhnam Djinn》系の二系統のジンがいる。このジンは空を飛んでいて、ランプから登場したような煙状の下半身を持っており、特に何のデメリットもないので《マハモティ・ジン/Mahamoti Djinn》の譜系だと思われる。

アラブ圏で言うところのジン(Jinn)の語源は「目に見えず、触れ得ないもの(wikipediaより)」で、自由に形を変えられる煙のような存在と考えられていたそうなので、こちらのジンのほうが現世で言われる「ジン」に近い物理的性質を持つようだ。一方で「ジン」は悪戯や裏切りをする存在とも考えられていて、《アーナム・ジン/Erhnam Djinn》系のジンは、内面的な形質を元にデザインされているらしい・・・もちろん妄想だけどね。

過去の飛行クリーチャーとして登場する青いジンのほとんどは、こっち系のジンとしてデザインされている。ただいくらか例外はあった。たとえば《ザナム・ジン/Zanam Djinn》は青くて飛んでいるのに煙っぽくない。これは青単独で登場したジンではなくて、インベイジョンのジンサイクルの一体としてデザインされているので、サイクル側のルールに従ったデザインになっているようだ。一方《漂うジン/Drifting Djinn》は、サイクルとは無関係な青いジンで飛んでいるのに足がある。これは多分、飛んでるジンというデザインなのではなくて、「デメリット付きジンがたまたま飛んでる」というので足がついていると(勝手に)解釈できる。

ところが、最近では《河水環の曲芸士/Riverwheel Aerialists》や《内向きの目の賢者/Sage of the Inward Eye》のような、ジンかつモンクとかウィザードのような存在が出てきて、このルールがだいぶん破壊されてきている。この手のジンが今後も増えて第三の譜系みたいなのが出来るのか、それともタルキールにおける一過性のものなのかは気になるところだった。そんな中で、オリジンで元のルールに従うジンが登場したということは興味深い。


ピア・ナラーとキラン・ナラー/Pia and Kiran Nalaar

MTG の世界ではなかなか珍しい、リア充カップルがひとつのクリーチャーとしてデザインされているカード。二人で 2/2 というあたり、内訳は気になる。仮に 1/1 が二人だとして、1ダメージだけ受けてからターンエンドを迎えたとき、内部的にどのようなダメージからの回復処理が行なわれるのだろうか。そのメカニズムには、とても興味がある。いや、もちろん群集で 2/2 みたいなクリーチャーはいくらでもいるわけだけど、明確に 2 人で構成されていると分かっていると、いろいろと妄想考察してしまうよね。

さらにどうでも良いことだけど、日本語でカード名に「・」が二つも入っているカードはなかなか珍しい。この「・」は姓名の区切りとして使われるパターンと、地名や名前などの固有名詞の後ろや前に「ゴブリン」とか「ジン」のような種族名が着く場合に、それらの区切りとして使われることが多いようだ。この使い方からすれば、「・」が2個以上使われることはほとんどないはず・・・なんだけど、MTG の歴史の長さは半端ではなく、同種のカードは過去に 2 枚も存在している。でも、いずれも 1 体のクリーチャーの名前の中に「・」が2つ含まれているもので、2人の名前にそれぞれ「・」が入っているなんてカードはさすがに初めてだったようだ。

具体的にどのカードに「・」が2つあるのかについては後日談にて(ものすごくどうでもいいので・・・)。

MTG カード与太話: オリジンより「森林の怒声吠え」「ヴリンの神童、ジェイス/束縛なきテレパス、ジェイス」


森林の怒声吠え/Woodland Bellower

熊と鹿を合成したようなクリーチャー。クリーチャーをライブラリーから呼び出す能力は「3マナ以下」「緑」「伝説ではない」と制約が厳しいものの、6/5 クリーチャーにサーチ能力 + 3 マナ分のクリーチャーがついていると思うと、カードとしては十分強い。緑なら 3 マナ以下でも優秀なクリーチャーはいくらでもいるし、呼ぶクリーチャーに困ることはない。6 マナで、実質的に 10 マナ分くらいの働きはするよね。

しかし、カードパワーがあるからといって、デッキに入れて有効に働けるかというと別問題。普通に 6 マナ出して 6/5 を出した上に、他のクリーチャーを呼び出すんだったら、他の勝ち手段を採用したほうがストレートで良いよね。そもそも、6 マナ出せる頃に 3 マナクリーチャーを引く価値があるかというのが難しいところ。これと同時に場に出したら勝ち的な 3 マナクリーチャーがいれば別だけど、そこまで強力な相方はいまのところいなさそう。神とか「巨森の予見者、ニッサ」あたりが引けたらまた違ってたかもね。でも、そうするとまた強すぎたりするから、調整されてだいぶん抑制されたという感じはする。それとも、この後にすごい相方がひっそり登場する予定なのだろうか。


「ヴリンの神童、ジェイス」「束縛なきテレパス、ジェイス」

六代目となるジェイス君。いや、零代目というべきか。イラストによると、人間(?)時代はさわやかなイケメン好青年だったらしい。カード的に興味深いのは、オリジンにいる 5 人のプレインズウォーカーで、人間時代のパワーが 0 なのはジェイス君だけというところ。他の 4 人は 1 以上のパワーがあるのに、ジェイス君は素ではルーター能力付き 0/2 と「結ばれた奪い取り/Bonded Fetch」の劣化版にすぎない。そもそもは温厚な気質だったというところが、カードのデザインにも反映されているのだろうか。ワールドウェイク付近で悪行しすぎて、各地で禁止になった有名人からは少し想像がつかない(本人の素行とは関係ないけど・・・)。

しかも、ストーリー的にはジェイス君は生まれつきいろんな魔法が使えたらしいのに、ルーター能力しかないのはずいぶんと控え目な設定という気がする。実は、これまで語られてきたほどジェイス君は能力を昔は発揮していなかったのだろうか。さらに、これまで出身地不明とされてたと思うのに、今回は「ヴリン」という地名がカード名につき、人間時代に住んでいたらしき地方のイラストがついた。もっと陰気な環境で鬱々と育ったのかと思いきや、意外にも青空の下で汗を流す(?)みたいな、健全そうな生活をしてるところに驚いた。とまあ妄想はつきないんだけど、謎多き魔術師の過去がいろいろと明かされていて、個人的にとても貴重なカードなのではないかと思っている(表は)。

ちなみに、裏については各地で議論されてそうなのでパス。

MTG カード与太話: オリジンより「秘宝の探求者」「衰滅」


秘宝の探求者/Relic Seeker

だいぶん劣化した感じの「石鍛冶の神秘家/Stoneforge Mystic」。石鍛冶君に比べると、パワーが 1 増えて自力で 3/3 になる能力は得た。しかし、装備品を探す能力は使い勝手が悪くなり、装備品を付ける能力は除去されてしまったのでは意味がない(独断)。「高名」の能力を生かすために、戦闘ダメージを通しやすくするカードが今後追加されることを考慮したとしても、サーチカードとして採用できるレベルではない気がする・・・どうかな。

石鍛冶君と同じように、(新たな)ジェイス君と同じセットで登場するというあたり、何かの因縁を感じるよね。リメイクするにしても、迂闊なデザインにして再度禁止されるようなことが起こらないように、開発としてはだいぶんマイルドな能力にするしかなかったのかもしれない。などと妄想しつつ、とりあえず4枚集めておきますかねえ。


衰滅/Languish

X=4 固定の「もぎとり/Mutilate」。特に条件なく常に -4/-4 できるのは、随分と使い勝手がよくなった気がする。「蔓延/Infest」に1マナ足しただけで、-2/-2 から -4/-4 になったと見てもなかなかのもの。破壊不能とか呪禁とか、面倒なクリーチャーが増えている今では、神の怒りのたぐいよりも信頼できる除去になるかもしれない。

それはそうと、全体に固定値の修整を与えられるカードとしては、-4/-4 という値を持つカードはこれまでになかったらしい。「突然の死/Sudden Death」や「闇の掌握/Grasp of Darkness」のように -4/-4 という修整値自体はそれほど珍しくはないけど、すべてのクリーチャーを -4/-4 できるカードは無かった。ちなみに全体に -3/-3 修整を与えるカードもない。

一方で -5/-5 のほうは「大荒れの悪魔/Havoc Demon」というのがいる。ただし、死亡時にしか能力が使えないので、このカードよりはかなり使い勝手はよくない。さらに -6/-6 となると、単体を修整するカードも「テヴェシュ・ザットの信奉者/Disciple of Tevesh Szat」しかなく、-7/-7 を越える修整を与えるカードは存在していない。まあ、あんまり修正値が大きくてもオーバースペックというのはあるんだろうけどね。いずれそういうカードが出てくる日が来るんだろうか。