MTG カード与太話: オリジンより「族霊導きの鹿羚羊」「ゼンディカーの乱動」


族霊導きの鹿羚羊/Totem-Guide Hartebeest

アンテロープという希少な品種のクリーチャー。初出は 2001 年のオデッセイの《優雅なアンテロープ/Graceful Antelope》で、2 体目は 2002 年のジャッジメントの《訓練されたプロングホーン/Trained Pronghorn》。そのあとは 2007 年になるまで追加されることがなく、そのまま絶滅するのかと思いきや、クリーチャータイプの大統合によって緑のアンテロープが 2 体追加された。以降は、忘れそうになった頃に 1 体ずつ追加されていくという感じで、このカードは 7 枚目になる。直前に出たのはゼンディカーの《族霊導きの鹿羚羊/Totem-Guide Hartebeest》なので、実に 3 年ぶりの登場というところ。次のゼンディカーに向けての、何かの予告ということなのだろうか。

それにしても、これまでの 7 体ともにカード名にはばらばらの動物(生物?)名が使われていて、能力やサイズ、色などにも共通点がないというフリーダムさ。辛うじて白と緑のクリーチャーという共通点がある程度。このカードに至っては Totem-Guid (族霊導き) も Hartebeest (鹿羚羊) のいずれの単語も初出で、なおかつ 2/5 というサイズも (4)(白) というコストも、過去のアンテロープのいずれとも異なっている。少なくとも、能力でクリーチャータイプを決めているのではないことは間違いない。

多分、開発の中にひそかな羚羊(レイヨウ)のファンがいて、カードの能力がデザインされたあとにクリーチャータイプを決めるとき、特に設定のないクリーチャーをこっそりアンテロープにしているんじゃなかろうか・・・などと妄想してみたり。


ゼンディカーの乱動/Zendikar’s Roil

《胞子塚/Sporemound》と《猛り狂うベイロス/Rampaging Baloths》の中間のようなカード。コストは《胞子塚/Sporemound》と同じだけど、本体はクリーチャーではなくなり、出るクリーチャーが 2/2 に増大したという感じ。《猛り狂うベイロス/Rampaging Baloths》はともかく《胞子塚/Sporemound 》がやや力不足だったので、少し方向性を変えて《地に種/Seed the Land》のようにエンチャントにしたらどうなるか、ということを試している感じ。いずれにせよ、能力としてはまさに「上陸」そのもので、カード名に含まれる「ゼンディカー」という名称に恥じない(?)ものになっている。こちらも、ゼンディカーに向けての調整ということだろうか。

ところで、エレメンタルなクリーチャー・トークンで 2/2 というサイズのものを出すカードは珍しいようで、過去にこれを出すのは《精霊のワンド/Wand of the Elements》しかない。一方で 1/1 を出すカードは 5 枚、3/3 は 2 枚、4/4 は 3 枚、5/5 は 2 枚と結構ある。2/2 を出すカードはこれが 2 枚目ということで、他のサイズを出すカードの枚数とバランスが取れたことになる。そこまで考えてデザインしているのかは分からないけど・・・とりあえずトークンの種類が増えると、トークンカードを作る楽しみは増えるよね。

MTG カード与太話: オリジンより「光り葉の選別者」「悲劇的な傲慢」


光り葉の選別者/Gilt-Leaf Winnower

タフネスとパワーが異なるクリーチャーを対象にとる、なんていうのは聞いたことがない。というか、パワーとタフネスが等しいクリーチャーを対象に取るカードも過去にないようだ。なかなか新しい。

実際に対象になるクリーチャーがどのくらいの割合いるのか、ちょっと調べてみた。オリジン導入前のスタンダードのクリーチャーカードは 798 枚で、そのうちタフネスとパワーが等しいクリーチャーは 355 枚だった。スタンダードのエルフは 4 体しかおらず、そのうち 3 体はパワーとタフネスが等しい。これをざくざくっと計算すると、つまるところ約 55 % のクリーチャーを対象に取れるようだ。戦場に 2 枚以上のクリーチャーカードがあれば、いずれかは破壊できるという程度に期待はできる。

実際にはトークンもあったりするし、使われるクリーチャーに偏りがあったりするから正確ではないけど、半分が対象にできるならそれほど悪くはなさそう。オリジンの導入後でも割合はそこまで変化しないだろうし、それなりに安定した除去として機能しそうではある。本体も 4/3 で威迫付きだし、リミテッドなら十分強いよね。構築では・・・


悲劇的な傲慢/Tragic Arrogance

《大変動/Cataclysm》によく似ているようで全然違う。残すパーマネントを選ぶのはコントローラーではなくて、これを唱えたプレイヤーになってる。こんなカード、他にあったっけ。自分も生け贄に捧げなくてはいけないけど、残すパーマネントはすべて自分で選べるので、相当に有利な状況を作りだせそう。被覆や破壊不能を除去できるのもいい。さらに《天秤/Balance》と違って手札は捨てなくてもいいから、コントロール系のデッキでも使いやすそうな気がする。青いデッキとかよく分からないけど、きっとそう。

ちなみにどうでも良いけど、Arrogance という単語は MTG では初出な一方で、Arrogant という形容詞のほうは使われていて、過去に「尊大な」と訳されている。名刺になったらなぜか「傲慢」になったらしい。ちなみに過去に「傲慢」と訳されたのは《傲慢/Hubris》と《傲慢な完全者/Imperious Perfect》の二枚がある。Hubris のほうは、いわゆる「七つの大罪」的な「傲慢」に相当する単語で、元はギリシア語らしい、英語では pride という単語がそれに相当している(鋼のなんとかで出てきたアレよね)。ただし MTG のカード的には pride は「誇り」とか「奮起」というように、良い意味を持つ単語として訳されていて、傲慢とか尊大とか訳されたことはない。その点 Arrogance は悪い意味しかないので「傲慢」でも良いのだろうけど、なぜ「尊大」ではなかったのだろうか。・・・って、どうでも良いね。

MTG カード与太話: オリジンより「搭載歩行機械」「血の儀式の司祭」


搭載歩行機械/Hangarback Walker

ありそうでなかった、コストが (X)(X) のクリーチャー。点数で見たマナコストは 0 だから、歩行機械の伝統(?)は守ったと言えそうだ。といっても、過去に歩行機械は《ファイレクシアの歩行機械/Phyrexian Walker》しかいない。飛行機械はたくさんいても、歩行機械が少ないのはどういうことだろう。英語名に Walker という単語が入っていて、なおかつアーティファクトであるものを「歩行機械」と訳してそうなんだけど、たとえば《窯歩き/Kiln Walker》は歩行機械とは訳されていない。イラストが多脚ロボットぽくないのがイカンのかと思ったら、いかにもな絵の《縒り糸歩き/Strandwalker》も歩行機械とは訳されなかった。こっちは装備品だからダメだったんだろうか。意外に歩行機械として認められるための敷居は高い(?)らしい。

カード的にもいろいろ面白い仕組みをもっていて、うまく使えば大量トークン発生装置として使えそう。自力で +1/+1 カウンターを置くのは大量のマナが必要or時間がかかるので、別の方法でカウンターを増やしてみたい。すぐ思いつくのは「増殖」かな。定番だけど、これが複数出ているときに《伝染病エンジン/Contagion Engine》でカウンターを直接増やしてみたり、《容赦無い潮流/Inexorable Tide》を張っておいて、カウンターをどんどん増やすのは楽しそう。移植持ちのクリーチャーや土地を先に置いて、これを出した瞬間に +1/+1 が 5,6 個乗るみたいなのができたら楽しいよね。仮に破壊されてしまっても、後に大量にクリーチャーが残るのでそんなに悲しくない(むしろ嬉しい?)のも良い感じ。無色だし、何げにどこかのデッキに席があるんじゃなかろうか。


血の儀式の司祭/Priest of the Blood Rite

またしても新機軸のデーモン。自分自身はデメリットを持たないのに、自分を召喚する側(クレリック)にデメリットを付けるという、新しい試みを行なってきた。長い MTG の歴史の中でも、デーモンほどデメリットの付け方を研究している種族はないのではなかろうか。

他人に呼び出されるデーモン自体は過去にもいて、ライブラリーからデーモンを出せる《血の語り部/Blood Speaker》がいる。でもこちらは、呼び出したデーモン次第でデメリットが決まるので、このカードとはデザインの方向性が異なっている。クリーチャー以外が呼び出すものとしては、たとえば《黒き誓約、オブ・ニクシリス/Ob Nixilis of the Black Oath》がいる。これも 5/5 のデーモンを出せるけど、出したときに 2 ライフ失なうデメリットが普通に(?)ついている。一方で《スカースダグの高僧/Skirsdag High Priest》はデメリット無しの 5/5 のデーモンが出せる。しかし、こちらは出すための儀式をするためにクリーチャーに死亡してもらう必要があり、なおかつクリーチャーを2体もタップする必要があって、なかなか面倒な感じ。これならデメリットのほうがいいんじゃという気もしてくる。いずれにしても、どれも似ているようでちょっとずつ違っており、長年の試行錯誤の様子が伺える。

・・・それはともかく、召喚した側のクレリックを何かの方法で処分してしまえば、実質的に 5 マナで 5/5 飛行 + 生贄要員がついてくるようなわけだし、かなり強いよね。手札に戻したり墓場と往復させたりして、アップキープに戦場にいないようにするもよし、《永劫の中軸/Eon Hub》みたいなのでアップキープ飛ばすのもよし(そこまでするかは謎だけど)と、工夫のしがいがありそうなカード。カードの使い方については、公式ページでいろいろ宣伝されているのでこれ以上はパス。個人的には結構好きな部類のカードなので(デーモンだし)、何か使ってみたい気はしている。