MTG カード与太話: イニストラードを覆う影より「戦争に向かう者、オリヴィア」


戦争に向かう者、オリヴィア/Olivia, Mobilized for War

今回は、さすがに戦争に行くということで、自分ひとりを強化するよりも、味方を強化したほうがいいという判断でもあったのだろうか。得物もグラスから剣に変えたようだし(剣は飾り物みたいだけど・・・)。孤高な感じのオリヴィア先生にしては殊勝な感じもするけど、単に味方を全員吸血鬼にしてみたかったというような、気紛れな理由という気もするよね。

無印(?)の《オリヴィア・ヴォルダーレン/Olivia Voldaren》時代は、敵方のクリーチャーにダメージを与えて吸血鬼に変えてた(そして魅了でき)のが、今回は自軍のクリーチャーに +1/+1 カウンターを置きつつ吸血鬼に変えるという能力にかわった。カード1枚を代償として要求されるけど、マッドネスのある環境ではむしろメリットか。本体のサイズはそのままで、コストが 1 下がった代わりに、自分自身は強化できなくなった。このあたりは微妙なところ。ただ、他の吸血鬼がいなくても十分活躍できる性能なので、(万が一)吸血鬼自体がぱっとしなくても使われそうな気はする。

MTG カード与太話: ゲートウォッチの誓いより「世界を壊すもの」


世界を壊すもの/World Breaker

《六角板のゴーレム/Hexplate Golem》のコストを 1 マナだけ緑に変換するだけで、打ち消されない上に追放できる《忍び寄るカビ/Creeping Mold》がつき、さらには墓地からの復活能力までついた。わずかな給料の変化で、ずいぶんと凶悪になったものだ。さすがに、コモンと神話レアでは格が違うらしい。緑のクリーチャーで比べるなら、サイズやコスト的に一番近いのは (5)(緑) の《アラクナスの紡ぎ手/Arachnus Spinner》だけど、これに1マナ足してこの能力と思えば十分に優秀だよね。

ただ、多色になると (4)(緑)(白)で 5/7 の《龍王ドロモカ/Dragonlord Dromoka》君がいる。多色なので直接の比較は難しいところだけど、この勝負はドロモカ君の勝ちかなあ(個人的にドラゴンが好きなだけという説もあり)。今後の活躍(と価格の変遷)を見守りたいところ。

MTG カード与太話: 戦乱のゼンディカーより「空乗りのエルフ」「淀みの種父」


空乗りのエルフ/Skyrider Elf

マナコストに X が含まれながら、X についてのテキストがないという珍しいカード。とはいえ、例によって長い MTG の歴史の中にはいろんなカードがあるもので、同種のカードはこれ以前にも《仕組まれた爆薬/Engineered Explosives》というカードがある。爆薬のほうのコストは (X) だったので、好きなマナの色の組合せで唱えることができた。対してこちらは(青)(緑)までは固定になったので、自由なマナの組合せでは出せなくなった。そのかわり、最低でも 2 マナ 2/2 飛行では出る。どちらかといえば、3 マナで烈日持ちの《太陽に触れたマイア/Suntouched Myr》に似ているか。

X=0 で出すと、コストも能力も《ガイアの空の民/Gaea’s Skyfolk》とまったく同じになる。これだと、コストパフォーマンス的にはそう悪くはない。異なる色マナ 3 つで 3/3 飛行だと、(青)(緑)(白)の《戦争のアスラ、ジェナーラ/Jenara, Asura of War》がかなり近い。ただし、ジェナーラは自力で +1/+1 カウンターを増やす能力を持っているので、少し負けている。色の組合せが少し違うけど、3 マナ 3/3 飛行といえば《カマキリの乗り手/Mantis Rider》がいて、こちらは飛行に加えて警戒、速攻まで持っているので、かなり負けている。4 色以上だと 4 マナ 4/4 飛行とか 5 マナ 5/5 飛行はいくらでもいるので、コストパフォーマンスとしては良くない・・・とまあ、結局は 2 マナか 3 マナで出すのが現実的っぽいけど、何げにエルフであったりとか、状況に応じてサイズ可変で出せるところとかが、何か生かせる気はする。


淀みの種父/Sire of Stagnation

「上陸」のキーワードをもつクリーチャーがたくさんいる「戦乱のゼンディカー」で、自分の戦場に土地が出たときではなく「対戦相手が土地を出したとき」に誘発する、かなり珍しい能力をもつクリーチャー。上陸デッキを狙い撃ちにするだけでなく、上陸に関係なく相手に土地を出すことを躊躇わせることもできる。公式記事にあるように、対戦相手がたくさんいる統率者戦みたいなところでは、確かにかなりの嫌がらせになりそうだ。ただ、6 マナを得た頃にこれを出したとして、どのくらい相手がそのあと土地を出してくるのかがちょっと分からない。うまく刺さるデッキがありそうな気もするけど、青も黒もあまり得意な色ではないので、得意な方々に考察は譲ることにしよう。

本題なんだけど、これは神話レアにしては名前があんまり格好よくない・・・とりあえず、stagnation のほうを「淀み」としたのは、過去の《淀みの霧/Mist of Stagnation》を踏襲したものらしい。このカードも、ロックをかける的な能力をもっていて、雰囲気としては《停滞/Stasis》に似ている。辞書によれば stasis が「流れが停止すること、不活性な状態にあること」というような意味合いなのに対して、stagnation のほうは「空気の淀み、発展が止まること、不景気な状態」という感じで、どちらかというと stagnation のほうが「停滞」という日本語に近い気はする。ただ、先に stasis が出て「停滞」と訳されたので、stagnation のほうは「淀み」という、やや脱力系の別の訳語を当てられたという経緯のようだ(多分)。種父 (sire) のほうも以前に取り上げたけど、意味的には「種馬」というような感じで、そのまま訳すと格好悪い。たぶん「総本山」とか「根源」みたいな雰囲気なんだろうけど、なかなか悩ましいところよね。