MTG カード与太話: オリジンより「燃えさし口のヘリオン」「大オーロラ」


燃えさし口のヘリオン/Embermaw Hellion

自分だけ、相手に与えるダメージを 1 増やせるヘリオン。《ショック/Shock》が 1 マナ 3 ダメージに、《稲妻/Lightning Bolt 》なら 1 マナ 4 点ダメージになる。1/1 クリーチャーでもダメージが通れば 2 点になるし、《放蕩紅蓮術士/Prodigal Pyromancer》は 2 点クロックになる。悪くはない。《槌のコス/Koth of the Hammer》の最終奥義を使えば、山がすべて 2 点ダメージ源になる・・・これはオーバーキルかな。何にしろ、本体も 4/5 トランプルと巨体だし、これで 5 マナなら安いのではないか。2体並んでも問題ないのもいい。少なくとも、リミテッドでは十二分に活躍できそう。

ところで、1 だけダメージを増すカードというのは、これまでありそうで無かったらしい。2 倍にするとか、2 だけ増やすとか、1 引くみたいなカードはあるのに、1 足すというのが無いというのは意外なところ。ちなみに 2 増すカードには《火口の爪/Crater’s Claws》と《紅蓮術士の篭手/Pyromancer’s Gauntlet》がある。ただし爪のほうは自身のダメージを増すだけなので、自分以外のダメージを一定の数だけ増加させるカードは、つまるところ籠手しかなった。これも割と最近のカードだし、ダメージを定数だけ増すカードの開発自体がまだ手探り状態なのかもしれない。


大オーロラ/The Great Aurora

色が間違ってるよねこれ。どう見ても《歪んだ世界/Warp World》系の、赤い混沌なレアカードという感じ。最終的に出すカードが土地だけだから、歪んだ世界より混沌度は幾分低いとしても、効果としてはとても赤っぽい。一方で「オーロラ」という単語の入った過去のカードは白の《オーロラのグリフィン/Aurora Griffin》しかなく、これもまた色が違っている。土地ということで緑になったのかな。ローウィンとかとも、色は関係ないよね・・・

カード的には使い方は難しそうだけど、狙って使えば土地が大量に出せるから、楽しいというか怪しい使い方ができそう。すぐ思いつくのは《溶鉄の尖峰、ヴァラクート/Valakut, the Molten Pinnacle》と山を大量に出すデッキ。パーマネント+手札を8枚ライブラリーに戻して、ヴァラクート1枚+山7枚を出したら勝利だよね。他にも、《微光地/Glimmerpost》で大量にライフを得るとかもできる・・・かなあ。単に、土地を大量に並べた上で《火の玉/Fireball》みたいな X 呪文を打つだけでも勝てる気もする。相手側にはパーマネントが何もない状態なんだし、大量の土地を使ってエムラ君を出して殴るみたいなのでも十分かも。この呪文のコストをどう払うかは考える必要があるけど、一撃必殺なデッキを組めそうだから、何か手段が開発されるに違いない(他力本願)。

MTG カード与太話: オリジンより「魂刃のジン」「ピア・ナラーとキラン・ナラー」


魂刃のジン/Soulblade Djinn

MTG の世界でジンというと、空を飛べて煙っぽい《マハモティ・ジン/Mahamoti Djinn》系のものと、空が飛べない上に何らかのデメリットを持つ《アーナム・ジン/Erhnam Djinn》系の二系統のジンがいる。このジンは空を飛んでいて、ランプから登場したような煙状の下半身を持っており、特に何のデメリットもないので《マハモティ・ジン/Mahamoti Djinn》の譜系だと思われる。

アラブ圏で言うところのジン(Jinn)の語源は「目に見えず、触れ得ないもの(wikipediaより)」で、自由に形を変えられる煙のような存在と考えられていたそうなので、こちらのジンのほうが現世で言われる「ジン」に近い物理的性質を持つようだ。一方で「ジン」は悪戯や裏切りをする存在とも考えられていて、《アーナム・ジン/Erhnam Djinn》系のジンは、内面的な形質を元にデザインされているらしい・・・もちろん妄想だけどね。

過去の飛行クリーチャーとして登場する青いジンのほとんどは、こっち系のジンとしてデザインされている。ただいくらか例外はあった。たとえば《ザナム・ジン/Zanam Djinn》は青くて飛んでいるのに煙っぽくない。これは青単独で登場したジンではなくて、インベイジョンのジンサイクルの一体としてデザインされているので、サイクル側のルールに従ったデザインになっているようだ。一方《漂うジン/Drifting Djinn》は、サイクルとは無関係な青いジンで飛んでいるのに足がある。これは多分、飛んでるジンというデザインなのではなくて、「デメリット付きジンがたまたま飛んでる」というので足がついていると(勝手に)解釈できる。

ところが、最近では《河水環の曲芸士/Riverwheel Aerialists》や《内向きの目の賢者/Sage of the Inward Eye》のような、ジンかつモンクとかウィザードのような存在が出てきて、このルールがだいぶん破壊されてきている。この手のジンが今後も増えて第三の譜系みたいなのが出来るのか、それともタルキールにおける一過性のものなのかは気になるところだった。そんな中で、オリジンで元のルールに従うジンが登場したということは興味深い。


ピア・ナラーとキラン・ナラー/Pia and Kiran Nalaar

MTG の世界ではなかなか珍しい、リア充カップルがひとつのクリーチャーとしてデザインされているカード。二人で 2/2 というあたり、内訳は気になる。仮に 1/1 が二人だとして、1ダメージだけ受けてからターンエンドを迎えたとき、内部的にどのようなダメージからの回復処理が行なわれるのだろうか。そのメカニズムには、とても興味がある。いや、もちろん群集で 2/2 みたいなクリーチャーはいくらでもいるわけだけど、明確に 2 人で構成されていると分かっていると、いろいろと妄想考察してしまうよね。

さらにどうでも良いことだけど、日本語でカード名に「・」が二つも入っているカードはなかなか珍しい。この「・」は姓名の区切りとして使われるパターンと、地名や名前などの固有名詞の後ろや前に「ゴブリン」とか「ジン」のような種族名が着く場合に、それらの区切りとして使われることが多いようだ。この使い方からすれば、「・」が2個以上使われることはほとんどないはず・・・なんだけど、MTG の歴史の長さは半端ではなく、同種のカードは過去に 2 枚も存在している。でも、いずれも 1 体のクリーチャーの名前の中に「・」が2つ含まれているもので、2人の名前にそれぞれ「・」が入っているなんてカードはさすがに初めてだったようだ。

具体的にどのカードに「・」が2つあるのかについては後日談にて(ものすごくどうでもいいので・・・)。

MTG カード与太話: オリジンより「森林の怒声吠え」「ヴリンの神童、ジェイス/束縛なきテレパス、ジェイス」


森林の怒声吠え/Woodland Bellower

熊と鹿を合成したようなクリーチャー。クリーチャーをライブラリーから呼び出す能力は「3マナ以下」「緑」「伝説ではない」と制約が厳しいものの、6/5 クリーチャーにサーチ能力 + 3 マナ分のクリーチャーがついていると思うと、カードとしては十分強い。緑なら 3 マナ以下でも優秀なクリーチャーはいくらでもいるし、呼ぶクリーチャーに困ることはない。6 マナで、実質的に 10 マナ分くらいの働きはするよね。

しかし、カードパワーがあるからといって、デッキに入れて有効に働けるかというと別問題。普通に 6 マナ出して 6/5 を出した上に、他のクリーチャーを呼び出すんだったら、他の勝ち手段を採用したほうがストレートで良いよね。そもそも、6 マナ出せる頃に 3 マナクリーチャーを引く価値があるかというのが難しいところ。これと同時に場に出したら勝ち的な 3 マナクリーチャーがいれば別だけど、そこまで強力な相方はいまのところいなさそう。神とか「巨森の予見者、ニッサ」あたりが引けたらまた違ってたかもね。でも、そうするとまた強すぎたりするから、調整されてだいぶん抑制されたという感じはする。それとも、この後にすごい相方がひっそり登場する予定なのだろうか。


「ヴリンの神童、ジェイス」「束縛なきテレパス、ジェイス」

六代目となるジェイス君。いや、零代目というべきか。イラストによると、人間(?)時代はさわやかなイケメン好青年だったらしい。カード的に興味深いのは、オリジンにいる 5 人のプレインズウォーカーで、人間時代のパワーが 0 なのはジェイス君だけというところ。他の 4 人は 1 以上のパワーがあるのに、ジェイス君は素ではルーター能力付き 0/2 と「結ばれた奪い取り/Bonded Fetch」の劣化版にすぎない。そもそもは温厚な気質だったというところが、カードのデザインにも反映されているのだろうか。ワールドウェイク付近で悪行しすぎて、各地で禁止になった有名人からは少し想像がつかない(本人の素行とは関係ないけど・・・)。

しかも、ストーリー的にはジェイス君は生まれつきいろんな魔法が使えたらしいのに、ルーター能力しかないのはずいぶんと控え目な設定という気がする。実は、これまで語られてきたほどジェイス君は能力を昔は発揮していなかったのだろうか。さらに、これまで出身地不明とされてたと思うのに、今回は「ヴリン」という地名がカード名につき、人間時代に住んでいたらしき地方のイラストがついた。もっと陰気な環境で鬱々と育ったのかと思いきや、意外にも青空の下で汗を流す(?)みたいな、健全そうな生活をしてるところに驚いた。とまあ妄想はつきないんだけど、謎多き魔術師の過去がいろいろと明かされていて、個人的にとても貴重なカードなのではないかと思っている(表は)。

ちなみに、裏については各地で議論されてそうなのでパス。