まさかの時のボードゲーム Gloomhaven (S1) シナリオ#1 Black Barrow [3] ラウンド 4-6

ラウンド4

K「ドアの隙間から見たところ、部屋には敵が3体いるようです。手前に2体、奥に1体ですね。左の一体はうまくすれば罠に落とせそうなので、やってみます。」
U「右、殺る?」
K「左を罠に落とすと、剣が届かなくなりますね…。私はそのまま右をやるので、左をやってもらえますか。」
U「おっけ。」
K「さて、ブーツを使いますかね。」

K は、あらかじめ街で買って装備していた Boots of Striding の能力を起動し、移動力を 2 上昇さた上で Overwhelming Assault の移動能力を使い、合計 5 マス移動した。そして左にいる Archer に肉薄し、PUSH のアクションで Archer を押した。Archer はトラップに落ちてダメージ受けることになった。

U「ないーす!」
K「まだまだ、これからですよ。」

次に K は、移動した量をそのま攻撃力に変換できる Balanced Measure のアクションで、右の Archer に攻撃した。クリーンヒットすれば 5 ダメージを与えることができ、一撃で倒せる予定だったのだが、-2 の修整カードを引いてしまい、結果は 3 ダメージだった。

K「なかなか、計算通りというわけにはいきませんねえ。」
U「いっくよー。」

U は Stun Shot の下段の移動能力を使い、K のすぐ横まで移動した。それから Enhancement Field の上段のアクションで、左にいる Archer を攻撃した。ダメージは 4 となり、Archer はそのまま倒れた。

U「エリート、来る?」
K「Archer はこのラウンドでは動かないようですから、エリートは大丈夫でしょう。問題はこっちの Archer ですね。ターゲットが 2 人なので、私だけでなくあなたにも攻撃が来ます。耐えてください。」
U「…耐える。」

エリート Archer は移動アクションがなく、攻撃可能範囲に U も K もいないので、何もせずそのまま立ちつくしている。右のノーマル Archer は K と U に対して弓を放った。U に対しては -1 の修整カードを引き、元々の攻撃値の修整が -1 のため、結果的にダメージを受けずに済んだ。一方、K は Archer に隣接しているため、遠隔攻撃のディスアドバンテージ効果によって修整カードを 2 枚引き、より悪いほうのカードを適用するのだが、Archer が引いたカードは二枚とも +1 だった。

K「運がいいのか悪いのか。」

シールドなどの効果も含めて、K は結果的に 1 ダメージを受けた。

ラウンド5

なぜか U がぐるぐる腕を回している。

U「引っぱるー!」
K「…アレをするんですね?」
U「準備、必要。」
K「時間がかかるってことですね。」
U「うん。」
K「では、右を何とかしときます。」
U「むふふ。」

K は Speare Dagger を近接攻撃として使用して Archer を攻撃した。修整カード -1 を引いてダメージは 1 だったが、Archer の HP は 0 となってその場に倒れた。続いて K は Shield Bash でシールドを張り、エリートの攻撃に備えた。

エリート Archer は 2 歩動いて、距離 3 から K に攻撃してきた。結果は 3 ダメージだったが、K はシールドを二重に張っているので、ダメージは 1 まで軽減された。

K「さーて、こちらはオーケーですよ。」
U「いっくよー」

U は罠の手前まで進んだところで、Hook Gun でフック付きのワイヤーをエリートに向って放った。+1 修整カードを引いてエリートに 3 ダメージを与えつつ、エリートにフックでひっかけて手前に引き倒す。

エリートはそのまま罠に落ち、罠からダメージを受けてエリートは崩れ落ちた。

ラウンド6

K「やりますねえ。」
U「ばっちり!」
K「では、一息つきますか。」
U「! おやつ!?」
K「おやつの時間です。」
U「おやつ!!」

部屋の敵を一掃したので、このラウンドは K も U 長い休息をとることにした。それぞれ捨て札から 1 枚ずつを廃棄し、HP を 2 回復させた。

K「さーて、ではそろそろ行きますよ。」
U「はむはむ。」

(つづく)
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まさかの時のボードゲーム Gloomhaven (S1) シナリオ Black Barrow [2] ラウンド1-3

最初の部屋

K「おやおや、お出迎えは三名さまですか。雑魚ですね…と言いたいところですが、一人は多少マトモな格好をしているようです。エリートってやつですか。」
U「エリート、おいしい?」
K「おいしいかは分かりませんが、弱くはなさそうです。」
U「…殺っちゃう?」
K「もちろん、殺るしかないわけですが。」

K は素早く動きだし、Leaping CLeave でエリート Bandit と右の Bandit を攻撃した。結果はエリートに 4 ダメージ、ノーマルに 2 ダメージとなった。

U「やるー!」
K「まだ油断してはいけません。」
U「ほい!」

U は K の後ろに隠れるように移動すると、Riviving Shock で K が攻撃した二体の Bandit を攻撃した。

U「当たれー!」

攻撃の結果は、エリートに 2 ダメージ、ノーマルに 1 ダメージとなった。

U「むーっ!」
K「さすがに、倒すのは無理でしたか。」
U「むむーっ!」
K「さて、耐えられますかね…」

三体の Guard が K に次々と襲う。三体からのダメージは、それぞれ 2, 2, 1 で K の HP は一気に半減した。

U「大丈夫!?」
K「…思ったよりはきついですが、まだいけそうです。」

ラウンド2

K「シールドを張って耐えますから、ヒールしてもらえますか。」
U「おけ。爆弾もする?」
K「一匹くらいは始末しておきたいですね。」
U「まかせて。」

U は素早く動いて、K にヒール 2 を実行した。それから Toxic Bolt でエリートを攻撃する。ダメージは 3 で、エリートを倒すことに成功した。

K「ナイスです!」
U「ふふーん!」
K「では、次は私が行きますよ。」

予告通り K は 6 回使えるシールドを張ると、Sweeping Blow で Bandit 二体に攻撃した。結果は両方に 2 ダメージで、右側にいた Bandit を倒すことができた。

Guard はアドバンテージ付き攻撃で修整カードを二枚引き、+1 の攻撃修整を得た。K はシールドを使って 1ダメージ軽減し、2 ダメージを受けることになった。

ラウンド3

K「何とか耐えられたようです。残った Bandit は始末しますよ。」
U「ヒール?」
K「自分でするので大丈夫だと思いますが、念のため用意はしてもらえますか。」
U「ほほい。」

K は自分にヒール2を実行し、HP は 7 に回復した。続いて Trample で Guard を攻撃したが、ダメージは 2 で Guard を倒しきれなかった。

U「殺っちゃう。」
K「どうぞ。」

U はヒールをする予定で Reinvigorating Elixir を構えていたが、ヒールではなく移動を実行して、残っている Guard の横に移動した。さらに、敵を焼き払う予定で構えていた Flamethrower も、強力な AoE 攻撃をすることはやめて、近接攻撃のアクションを実行することにした。その結果、Guard へのダメージは 3 となった。

Guard は倒れ、部屋の中には K と U 以外に動くものはいなくなった。

K「一息つけますね。」
U「おやつ、おやつ!」
K「それは、次の部屋を片付けてから、ね。」
U「えーっ!」

(つづく)
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まさかの時のボードゲーム Gloomhaven (S1) シナリオ #1 Black Barrow [1] シナリオ開始前

ただのリプレイですが、実験的になぜか物語風です。

プロローグ

犯罪と混沌の街 Gloomhaven の下町にある中堅の傭兵ギルド MML は、さる高貴な人物からの密命を受け、盗賊の巣窟となっているという Black Barrow へ何度か討伐隊を送っていた。しかし、これまでの討伐隊は悉く返り討ちにあったようで、誰も帰ってくることはなかった。事態を重く見たギルドマスターの「入」は、二人の手練のギルドメンバーである Brute の “K” と Tinkerer の “U” を呼び出すことにした。

入「君達に頼みがある。」
U「イヤ。」
K「金ならありません。ヒマもありませんが。」

あいかわらずの二人である。彼らは手練であることは間違いないのだが、一癖も二癖もあることでも有名であった。最初から分かっていたことではあるが、彼らの傍若無人な態度を目の当たりにして「入」は苛立ちを隠しきれなかった。

入「…先に話を聞け。」
U「めんどい。」
K「ツケを払ってもらえるなら聞きますよ。」
入「…」

ギルドマスターの「入」は怒鳴りそうになるところを、間一髪のところで堪えることに成功した。

入「…わかった、例のものを。」
β「はい。」

唐突にドアが開き、ギルドの職員である「β」が盆の上に何かを載せて持ってきた。K と U の二人が興味深そうに覗きこむ。こう見えても「入」は、この荒くれ者が集まる Gloomhaven で 10 年もギルドマスターを務める男だ。こういった連中を手懐ける方法のひとつやふたつ、心得くらいなくてはとても務まるものではない。

U「あっ! あずま屋のショートケーキ!」
K「…60ゴールドとはまた奮発しましたね。ツケにはいくらか足りませんが。」
入「とにかく座ってくれ。」
U「食べる!」
K「まあ、聞くだけならいいでしょう。」

K は金の入った小袋を手早くクロークの内側にしまいこみ、U はショートケーキにかぶりついた。

入「さて、君らも知っていると思うが、最近 Black Barrow の盗賊どもが暴れていてな。」
U「はむはむ」
K「Black Barrow ですか。あまりいい噂は聞きませんね。」
入「君たちには、奴らが奪っていった書類を取り戻して来てほしい。」
K「それは…散歩のついでに、というわけには行かないですねえ。」
入「そんな簡単な相手なら、もうとっくに解決しているところだ。」
U「遠いの?」
K「街から1時間くらいの場所ですよ。」

U「…遠い」
K「えーと、距離はともかくとしてですね…ギルドでも上位の実力をもつ『赤き獅子』 の4人パーティですら全滅したと聞いてますよ。私たちが2人で行ってどうにかなるもんですか。」
入「私に考えがある。」
K「ほう。」

ギルドマスターの自身ありげな態度をみて、無意識のうちに K は腕組みした。彼が話に興味を持ったときの癖である。

入「まず、盗賊やモンスターの数はいつも同じではないらしい。偵察に入って逃げ帰ってきたメンバーの情報によれば、2人のときと4人のときでは、明かに出てくる敵の数が違ったそうだ。」
K「ほう、それはどういうことでしょう。」
入「理由はわからん。連中はやってくるパーティの人数を、何らかの方法で知っているのかもしれん。ともかく、2人で行くと敵の数は少なくなるらしい。」
U「でも敵強い。」
K「そうですよ、最初に行ったパーティは 2 人だったと聞きますが、彼らも帰ってこなかったのでしょう?」
入「うむ。だから私には考えがある。」

K の懸念にもかかわらず、「入」はにやりと笑った。

K「と、言いますと?」
入「イージーモードで行くのだ。」
K,U「イージー!?」
入「これまで帰ってこなかった連中は、戦利品や経験値に目が眩んで、ノーマルとかハードモードで潜ったそうだ。」
K「…つまり、イージーモードで行けと言うことですか。敵は弱くなるけど、戦利品も経験値も減ってしまうという、あの?」
入「そうだ。今回のミッションは、書類を取り戻すことが重要なのだ。現地で戦利品を稼ぐことなど重要ではない! 」

すくっと立ち上がる K。ショートケーキの最後のひとかけを口に押しこんでいた U は、それを見て慌てて立ちあがった。

K「…U、帰りますよ。」
U「…ほい。」

躊躇なくドアに向かう 2 人を見て、慌てるギルドマスター。

入「ま、待て。心配するな、イージーで減る戦利品や経験値を補填する方法も考えてある。」
U「?」
入「ランダムダンジョンだ。」
K「っ! なんと、あの伝説の?」

そう言われても、何のことか分からずきょとんとする U。一方で、めったに動揺しない K が驚きの表情を見せたことで、「入」は少し気分をよくした。

入「うむ、そうだ。依頼主のバリアント伯爵から、特別に許可を得た。」
U「おいしい!?」
入「うむ、おいしいぞ。」
U「おいしいの好き!」
K「…分かってると思いますが、ダンジョンなんですから。食べ物じゃないですよ。」
U「おいしいの好き。」
K「聞いてますかね…」

咳払いをする「入」。

入「ともかくだ。この作戦に参加するメンバーに限り、ランダムダンジョンを使用して良いことになった。」
K「よく許可されましたね。」
入「背に腹は換えられんということだろう。このまま書類が奪還できなければ、伯爵の立場も危うくなる。無論、このギルドにも大きな影響が出る。」
U「ランダムダンジョン…戦えるの?」
入「もちろんだ。ギルドの依頼するシナリオと違って、無制限に何度でも戦えるぞ。」
U「楽しそう。」
K「ふうむ、そうですか。無限に経験値やゴールドが稼げるという、伝説のランダムダンジョンに行けるというなら、少し考えてもいいですね。」
U「行きたい、ランダムダンジョン。」
入「引き受けてくれるか。」

黒い皮貼りのソファーにまぶかに腰掛けたまま、じっと K を見入る「入」。K は表情を崩さなかったが、「入」は K の 答が肯定的なものであることを、その無表情の下から読み取っていた。

K「…一晩考えさせてください。返事は明日でいいですよね。」
入「もちろんだ。」
K「あ、今晩の夕食はおごりですよね?」
入「…もちろんだ。」
U「わーい!ご馳走!」
入「…エールは5杯までだからな!」
U「10杯で。」
入「…7杯までだ。」
U「…8杯」
入「…よかろう。」
K「では、請求書はあとで回しておきます。」
入「いい返事を期待している。」

街中にて: 都市イベント(#02)

β「ギルドからのお知らせです。これから先に、イベントカードの若干のネタバレがあります。カードの内容を知りたくない方は、記事の最後まで読み飛ばすことをお勧め致します。」

ギルドから宿屋へ向かう途中、喧騒とする Gloomhaven の市場の中を二人は歩いていた。

U「はむはむ。」

市場の店で見つけて強引に K にねだったシュークリームを頬張る U の横で、K はギルドマスターとの話を思いかえした。

K「結局オーケーしてしまいましたねえ。まあ、ランダムダンジョンの無限使用権は魅力的なのですが。」
U「シュークリーム好き。」
K「あなたは単純ですね。なぜそれで機械工の Tinkerer とかやっていられるんですか。」
U「同じ。」
K「? 何がですか。」
U「考える脳筋。」
K「私のことですか? Brute が思考を巡らせて何が悪いのでしょう。」
U「筋肉の脳、考えられない。矛盾。」
K「…人のことは言えない、ということですか。」

K はやれやれという様子で首を振った。

?「おい、おまえら。わしの話を聞け。」

突然、頭からすっぽりローブを被った、いかにも怪しい風体のおっさんらしき人物が背後から呼びかけてきた。素早く振り向く二人。

U「…殺る?」
K「大丈夫、殺気は感じません。」

おっさんは、何か金属の欠片のようなものを手に持っている。U は警戒して身構えたが、K は武器ではないことにすぐに気がついて U を静止した。

?「おまえら傭兵だろ。」
K「…だったら何ですか。」
?「俺は、これを昨日下水道で拾った。こいつには何か書いてある。俺には読めん。だが、字が光っとる。きっとすごい秘密が書かれているはずだ。おまえらなら読めるだろう?」
K「ほう。」

K が確かめようと身を乗りだすと、おっさんはすばやく手をひっこめた。じろりとおっさんを睨む K。ごつい体格をした Brute の K に睨まれ、おっさんはわずかに怯んだが、それでも引き下がりはしなかった。

?「み、見たけれりゃ 10G 払え! さもなきゃ、読ませはせん!」
K「…」

じっと動かずにおっさんを睨み続ける K。おっさんの手がわずかに震えるのが見えた。その横で、U がゴソゴソと動く。

U「臭い。」
K「?」
U「あれ、すっごく臭い。」
K「…下水にあったと言ってましたから、臭いでしょうね。」
U「臭いのイヤ。」

それを聞いて、K は体の力が少し抜けた気がした。

K「残念ですがその宝物は、他の人に譲りますよ。この子が臭がるのでね。」
?「なに、後悔するぞ!」
U「臭いのイヤ!」
K「さ、行きますよ。」
?「チッ!、腐れ傭兵どもめがっ!」

K と U は、吠えるおっさんを後に、夕暮れの市場の中を宿へと向っていった。

旅程にて:街道イベント #13

Black Barrow と呼ばれる場所は Gloomhaven の街のすぐ北東にある、Corpsemoon と呼ばれる小高い丘の中腹あたりにあった。街の新市場の門から出て、小一時間も歩けば着くような距離である。街からそれほど遠くない場所ではあるが、丘に行った者は誰も帰ってこないという噂が立ち、まともな人間は近づかない場所となっていた。K と U は市場のはずれにある門を出て、Corpsemoon の丘へと向かっていた。このあたりは街の近くまで Black Barrow を根城とする盗賊の縄張りになってしまったせいもあり、最近は特に治安が悪い一角となっている。

街道沿いには廃墟のようになった空家が建ち並び、そこには Gloomhaven の街から追い出された素性の怪しい連中が住みついていた。彼らは、隙あらば通行人から何かを奪おうと、あらゆる空家の影から虎視眈々と狙っている。街道沿いに進めば、その連中の住む廃墟群を通ることになるため、K はわざと街道を迂回して丘へと続く林の中を進むことを選んだ。林の中も安全とはいい難かったが、見通しが効く分だけ廃墟の中を進んでいくよりはマシであった。

K「Corpsemoon の丘には、その名の通り動く骸骨や屍体がいるらしいですよ。丘に近づいた人は、みな殺されて屍体の仲間になるんだとか。」
U「臭そう。」
K「怖くはないのですか?」
U「怖いより、臭いのイヤ。」
K「…あなたらしい感想ですね。しかし、屍体なら臭いと思いますよ。」
U「帰る。」
K「まあまあ。そう言わずに。ランダムダンジョンもありますし。」
U「ランダムダンジョン…」
K「帰ったら、あずま屋のチョコレートエクレアをあげますよ。もちろんギルドマスターの驕りですが。」
U「ちょこエクレア!」
K「どうですか。」
U「行く。」

機嫌をよくした U が、丘の上へと進み始めようとしたそのときだった。

K「…待って下さい、何かいます。」

K は U をひっぱって、木陰に隠れた。見ると、林の上のほうにたくさんの人影らしくものが見える。人影は近づいてくる様子はなく、ただ呆然と立ちつくしているようにも見える。

U「何あれ。」
K「さて、何でしょうね。」

二人は警戒しながら、林の中をゆっくりと進んでいった。人影までもう少しというところで、K はようやく人影の正体に気がついた。

K「…あれは、人間の像ですね。」
U「像?」
K「つまり人形です。」
U「おいしい?」
K「食べられません。」
U「戦う?」
K「生きてませんから、襲ってもこないと思いますよ。」
U「…つまらない。」
K「何故こんなところに、像があるんでしょうねえ。何かの罠なのか…」
U「あっ!」

U は、何かに気がついたように突然像に向かって走りだした。

K「油断は禁物ですよ!」

K も急ぎ後に続いて走った。

U「キラキラ!」

U が手に取ったのは、像の首にかかっていたネックレスだった。いくつもある像には、いろいろな装飾品らしきものが掛けられていたが、このネックレスだけが値打ちのあるもののように見えた。

?「触るな!」

突然、すぐ近くで怒鳴り声がした。U と K が警戒して身構えると、地面がぱっくりと開いて中からおっさんが出てきた。さすがの 2 人も、地面から出てくるおっさんには驚いた。

?「これは皆、私の嫁だ。勝手に触るな!」
U「嫁?」
K「嫁、ねえ。」

おっさんの台詞を聞いて、K は少し脱力した。確かに像は女性に見えなくもなかった。ただ、材料が鉄屑や木材の端切れといったゴミがほとんどで、すえたような匂いがする上に、お世辞にも見た目が良いと言える代物ではなかった。

?「離れろ!」

二人は、おっさんの剣幕に押されると同時に、何か触れてはいけないもののような気配を感じて後退りし、そのまま丘の上に駆けだそうとした。

?「待て、そのネックレスは嫁のものだ。嫁に返せ!」
U「えー。」

露骨にいやがる U。

U「もう、もらったもん。」
K「大した価値はなさそうですよ。」

K は面倒なことになる雰囲気を感じて U を諭そうとした。しかし U は聞かなかった。

U「キラキラ!」
?「 返せ! このクソ傭兵ども!」

おっさんは、いつのまにか手にした鈍器を片手に、二人ににじり寄って来る。K は仕方なく身構えた。しかし、予想以上に早くおっさんが U に向かって駆け出した。

K「U!」
U「やだーっ!」

K が叫ぶと同時に、U が反射的に何かを投げつけた。直後、猛烈な閃光と爆発音が轟き、あたりは煙に包まれた。

?「うわーっ!?」
K「今のうちに!」

じたばたする U の腕をつかむと、K は一目散に丘の上に向かって走りだした。 U が投げたのは、彼女がこのところ開発していた、謎の薬品が入った筒だったようだ。これは、武器としての殺傷能力は低いものの、敵を大きな音と光で相手を怯ませることができるものだ。おっさんは、これをまともに食らった上に煙につつまれてしまい、二人を完全に見失っていた。K と U はその隙に、立ち並ぶ像の間をすり抜けて丘の上へと走り去った。

K「ふー、まったく。これが盗賊どもの罠だったら面倒なことになるところでしたよ。」
U「キラキラ、ゲット!」
K「はー、あなたは呑気ですねえ。」

溜息をつく K をよそに、U は掴んだネックレスを無邪気に眺めていた。ネックレスは希少なものではなかったが、市場で叩き売っても 4 ゴールドくらいにはなりそうだった。少なくとも、K はそう見立てた。

K「何事もなくて良かったですよ。」

林の中を強引に走り抜けたせいで服にいくつもついてしまった、毛虫のような形の下草の種を落としながら K は言った。

K「でも、いきなり走るのは良くありませんね。罰として、エクレアは無しにします。」
U「えっ! エクレア!?」

U の顔がひきつる。

K「ネックレスが手に入ったからいいでしょう?」
U「やだ! エクレア食べる!」
K「ダメです。」
U「やだーーっ!」

駄々っ子のように泣きだす U。どうしようもないな、と思いながらも K は U の頭を撫でる。

K「分かりました。では盗賊のアジトについたら、私の指示通りに動くのですよ。そしたら、エクレアもあげます。」
U「ほんと?」
K「ほんとです。」
U「嘘ダメ。爆弾飲ます。」
K「…あなたなら、本当にやりそうで怖いですねえ。大丈夫です。ちゃんとあげますってば。」
U「…わかった。」
K「ではさっさと行きましょう。日が暮れるまでには、片付けてしまいたいところです。屍体のうろつくような場所に、長居はしたくありませんからね。」
U「夜はエクレア!」
K「はいはい、行きますよ。」

謎のおっさんのことなどすっかり忘れた U は、軽い足取りで林の中を丘の上へと向かっていった。

K (思ったより物語のところが長くなって、書くのが大変だったなあ。次回からは適当に省略しよう)

ナゾのことを思いつつ、K も後を追うのであった。

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