MTG カード与太話: タルキール覇王譚より「ラクシャーサの死与え」「跳ね返す掌」


ラクシャーサの死与え/Rakshasa Deathdealer

猫でデーモンという、かなりニッチな需要に応えた初めてのカード(注1)。これまでに猫かつゾンビとか、猫かつ吸血鬼なんてのはいたけど、猫でデーモンというのはいなかったらしい。しかし、絵的には全然猫っぽさもデーモンっぽさもないので、どのくらいニーズに答えられたのかは謎。死与え(Deathdealer)という単語も初めてのようなので、猫デーモンを表す名詞として作られたのかも。何にせよ、猫デッキの一翼を担うことにはなりそう。(注2)

カード的には危険な影/Perilous Shadow と ルートワラ/Rootwalla を足して 2 で割ったような感じというか、ダークリング・ストーカー/Darkling Stalker に緑を足して 2 マナほど安くなったけどパンプアップに緑が必要になったというか、ロッテスのトロール/Lotleth Troll が手札を捨てなくていい代わりに1ターン限り強化できるようになった、というようなクリーチャー。2 マナで +2/+2 できるのにルートワラ/Rootwalla みたいなパンプアップの回数制限がなく、いざとなったら再生できるというのは悪くない。ただ、パンプアップと再生に使うマナが共通しているところに、やや使いにくい感じがする。黒黒で +2/+2、緑緑で再生(またはその逆)、くらいならかなり良かった気がするけど、それじゃ強すぎということなのかな。


跳ね返す掌/Deflecting Palm

ダメージ反射/Reflect Damage が 3 マナ減ったら、自分に与えられるダメージだけ反転できるようになった、というようなカード。クリーチャーへのダメージは防げないものの、自分への戦闘ダメージや X 火力などの直撃は跳ね返せる。2 マナなら、それなりに使えるような気はするけど・・・この手の受動的なカードは構築にはなかなか入りにくいから、リミテッドで活躍するくらいかなあ。場合によっては、サイド要員くらいにはなりそうな気もする。絵がなかなか格好いいし、使うタイミングによってはかなり爽快になれる可能性もあるので、どこかでは一度使ってみたい。

カード名の「跳ね返す」に相当する部分の英語は Deflecting で、跳ね返すというよりは「向きを変える」というイメージに近い。発生源から自分に向かうダメージの向きを、コントローラに変更するというニュアンスだよねきっと。でも Reflect という単語の入っている ダメージ反射/Reflect Damage も、発生源にダメージを戻すわけでもなかったりする。Reflect という単語の入ってるカードは沢山あるけど、Deflect という単語の入っているカードは少なくて、これの他には 偏向/Deflection と 神聖なる反撃/Divine Deflection しかないらしい。偏向/Deflection は呪文の「向きを変える」効果があり、神聖なる反撃/Divine Deflection はこのカードのように、ダメージの向きを変える効果をもっている。でも Reflecting Mirror なんかは 偏向/Deflection みたいな能力を持っていたりと、あんまり統一されていない感じ。このあたり、英語的なニュアンスでも微妙な差なんだろうか・・・


  • (注1) さらにラクシャーサの大臣という猫デーモンなカードが後から発表されたので,猫デーモンは2枚になった.
  • (注2) そんなのがあるのかは謎

MTG カード与太話: タルキール覇王譚より「奈落の総ざらい」「死滅都市の悪鬼」


奈落の総ざらい/Empty the Pits

プリントミスで X がひとつ多いんじゃなかろうかと、一瞬思ったカード。忌むべき者の軍団/Army of the Damned と比べて、いいところがあんまりない。黒 4 マナだけで 2/2 ゾンビをゾロゾロ出せる可能性はあるけど、そもそも黒4マナが出せるようになったくらいじゃ、墓地に大量のカードが落ちているはずもない。インスタントなので相手のターンエンドに使えたりするのは良いとしても、ゾンビはタップ状態で出るわけだし、インスタントのメリットがかなり減ってしまってる。真夜中の儀式/Midnight Ritual と比べても、追放するのがクリーチャーカードでなくてもいいというメリットよりも、デメリットのほうが大きすぎる感じ。リミテッドで使おうにも色が漉すぎて辛いし、そもそも神話レアだから見掛けること自体少なさそうだし、いったいこれはどうしたらいいのだろうか。

バベルっぽいデッキを組んで、心の傷跡/Traumatize とかで大量のカードを墓地に落として、ゾンビの大軍団を出してみるくらいしか思いつかなかった。それとも、このあと「探査でカードを1枚追放したとき、各カードは1ではなく2を支払う」みたいなエンチャントが出てくるとか。それならかなり強いかも。というか、下のカードも探査つきにしては随分重いし、何かそういうカードが出るという予言だったりして。


死滅都市の悪鬼/Necropolis Fiend

これまた重い、探査つきデーモン。4 枚くらい追放して、5 マナで 4/5 飛行が出たら何とか、というくらいだろうか。マイナス修正を与える能力は強力だけど、こいつの呼出しで墓地のカードを使いきってしまって、能力は実質的にあんまり使えなさそうな雰囲気がある。この能力は XXT くらいにしといて、こっちも墓地のカードの追放で 1 払える、くらいだったら良かったのになー。カードを追放しないと全く能力が使えないのでは、あまり使い勝手がよくない。上でも書いたけど、探査に何かのボーナスを付けるカードでも出ないと、リミテッドですら重めの 4/5 飛行クリーチャーという以上の活躍はできそうにない感じはする。いや、きっと何かあるに違いない(願望)。

このデーモン、死滅都市(Necropolis)と名前に入っているけど、赤マナや青マナを使う能力はもっていない。なので、崩れゆく死滅都市/Crumbling Necropolis とは関係がないらしい。どちらかというと、アーティファクトクリーチャーの Necropolis が探査っぽい能力をもっているので、こちらのほうがまだ近いのかもしれない。ちなみに Necropolis という名前が入ったクリーチャーカードは、これら以外には 死滅都市の執政/Necropolis Regent という吸血鬼しかいない。さすがに死滅した都市だけあって、住民は少ないと見える。この吸血鬼は、このデーモンとは違って探査っぽい能力はない代わりに、+1/+1 カウンターを置く能力をもっている。この能力も、 方向は違うけど Necropolis の +0/+1 カウンターを置く能力と微妙に符号しているよね・・・というか、崩れゆく死滅都市/Crumbling Necropolis はアラーラの友好 3 色を出す土地だし、タルキールのテーマとはずれてるから関係ないよね(?)。はたして、こういったところはどこまで考えてデザインされてるのだろうか・・・。

MTG カード与太話: タルキール覇王譚より「賢いなりすまし」「ケルゥの呪文奪い」


賢いなりすまし/Clever Impersonator

クリーチャーではないパーマネントのコピーにもなれる、相当に芸達者な多相の戦士。カードタイプの異なるもののコピーになれる、かなり珍しいカード。微妙にルール破壊系のカードで、MTGO の実装者をいろいろ苦しめそうなカードではある。何かすごいことが起こるかもしれないから、とりあえず4枚集めとけ的なカードなことは間違いない。

他のカードタイプのコピーになれる過去のカードを探してみたところ、アーティファクトのコピーになれるエンチャントの Copy Artifact、条件付きでクリーチャーになれる 多相の戦士の真髄/Shapeshifter’s Marrow くらいしか見つけられなかった(注1)。アーティファクトのコピーになれるクリーチャーとしては、ファイレクシアの変形者/Phyrexian Metamorph、彫り込み鋼/Sculpting Steel などがあるけど、いずれもアーティファクトカードでもある。エンチャントのコピーになれるカードとしてもエンチャント複製/Copy Enchantment があるけど、これも元々エンチャントだし。そして、 プレインズウォーカーのコピーになれるカードは他にはない。まあ、Magic 2014 までは、プレインズウォーカーのコピーになる意味があんまりなかったかからだろうけどね。このカードが悪さをしなければ、今後似たようなカードが出てくるのかも。


ケルゥの呪文奪い/Kheru Spellsnatcher

虚空魔道士の弟子/Voidmage Apprentice と 呪文乗っ取り/Spelljack を合成したようなカード。相手に使われると、すごく嫌な気分になることは間違いない。意味深に裏向けに設置しておき、どこかのゲームのように「発動」とか言いながら呪文を打ち消された挙句、その呪文をコピーして使われた上に 3/3 クリーチャーが相手の戦場に残るとか、どう考えても気分がよくない。

ブロック構築くらいなら、青いデッキに入ってきそうな感じがする。ただ、スタンダード使うには重すぎる感じはある。ソーサリーのタイミングで 3 マナかけて設置しないといけないし、打ち消すのに 6 マナ使うというのはさすがに重い気がするんだけど、どうなんだろう。コントロール系のデッキはあいかわらずよくわからないのよね・・・相手ターンの終了時に設置できたり、4 マナくらいで変異できたり、残るクリーチャーが 4/4 飛行だったり、くらいなら確実に入ってきそう。でも、残念ながら(幸運なことに?)そこまで強力ではなかった。刹那呪文が乱舞するようになれば、何枚か使われる・・・のかなあ。


注1: コピーのトークンを出すカードは沢山ある。