MTG カード与太話: タルキール覇王譚より「不気味な腸卜師」「血に染まりし勇者」


不気味な腸卜師/Grim Haruspex

腸卜師(ちょうぼくし/Haruspex)って何かと思ったら、ローマ時代に家畜や生け贄にした動物の内蔵(腸)を使って占いをしていた人のことらしい。腸卜官とか臓卜官という役職まであって、帝政ローマの政治にも影響を与えていたそうな。生け贄を使って占いをするというだけですでに不気味のように思うんだけど、これはその中でも格別に不気味度の高い占い師らしい。とはいえ、過去に「腸卜師」という単語の入ったクリーチャーはいないので、比較はできないんだけど・・・。ちなみに、占い(卜い)は色ごとに担当する職種が違っていて、青と黒はウィザード、赤と緑はシャーマン、白はクレリックが担当している。過去にいた黒い占い師は髑髏の占い師/Augur of Skullsしかいないので、初めての同僚ということになる(のかな)。

この占い師の仕事は、味方のクリーチャーが死んだら内蔵を見て占いをする(カードを1枚引く)というもの。想像するとちょっとエグいけど、この能力はなかなか役に立ちそう。組み直しの骸骨/Reassembling Skeleton みたいなのを特攻させ、墓地に落としてはカードを引くみたいなことをするだけで、普通にかなり強い予感がする。このブロックなら下の血に染まりし勇者/Bloodsoaked Championと相性が良い感じ。素出しのコストも変異コストも安い上に複数枚並べても腐らないから、クリーチャーを並べる系のデッキなら席がありそう。


血に染まりし勇者/Bloodsoaked Champion

味方が攻撃していると何度でも墓地から蘇える、攻撃しかできない勇者。ブロック構築で黒っぽいウィニーデッキを組むときには、間違いなく中核になりそうなクリーチャー。勇者という名前に恥じない働きをしそう。ちなみに、過去の黒い「勇者」はゾンビかスケルトンだったので、ナマモノ(?)の黒い勇者としてはこれが初めてらしい。過去の勇者たちも墓地に行くのを防いだり、墓地から戻ったり、他のカードを戦場に戻すような能力があり、黒い勇者は何らかの甦り能力をもつ点で共通している。ただ、過去のカードはゾンビやスケルトンだから蘇るのに説明はつくものの、この勇者はナマモノ(人間)なのに墓地から戻ってきてしまう。いったいどういうカラクリで戻ってきているのかは謎。

クリーチャーの勇者(Champion)はすべからく戦士なのかと思いきや、過去に 11 体の「勇者」がいる中で、戦士なのは6体と半分程度しかいない。あとは単なるゾンビだったり、アバターだったり、ただの兵士だったりといろいろのようだ。ちなみに、スレイベンの勇者/Thraben Valiantという「勇者」と和訳されているクリーチャーもいるけど、英語は Champion でなくて Valiant となっている。Valiant が名詞として入っているカードはこれしかなく、どうも Chanpion とは違う系列の勇者らしい。まあでも、能力的に何か大きな差異があるわけでもないけどね。MTG の世界では勇者はわりと自由な職業(?)で、誰でもなれる(自称できる)ということなのかもしれない。

MTG カード与太話: タルキール覇王譚より「真珠の達人」「尊いラマスー」


真珠の達人/Master of Pearls

真珠を大量に投げると、なぜか味方クリーチャーが +2/+2 されるという謎のクリーチャー。真珠にそんな効能があるのかと思って調べてみたら、真珠槍の急使/Pearlspear Courierに似たような能力があるくらいで、他の「真珠」なカードはあんまり関係がなかった。この「真珠」とは「白を意味する宝石」という位置付けで扱われているようで、例えばMox Pearl とか真珠の破片/Pearl Shardのような白いアーティファクトの名前に使われたりしている。なので、真珠の達人というのは単に白いクリーチャーの達人というくらいの意味のようにも思える。しかし、そういう扱いの割には「真珠(Pearl)」という単語の付くカードは少なくて、これを入れても 10 枚ほどしかなかったりする。似たような扱いのものに「象牙」があるけど、こちらも 10 枚ほどしかカードはなかったりするので、このあたりの単語のイメージはあまり固まってないようだ。

カード的には、序盤に引いたら表向きに出して普通に殴り、中盤以降なら裏向きに出してフィニッシャー的に使う、みたいなことができるので、単純な 2/2 クリーチャーよりは腐りにくそう。でも変異のコストが高すぎるので、これをわざわざ入れた構築デッキを組むかというと難しい感じ。変異コストを簡単に踏み倒せるようになったり、背教/Backslideみたいな再利用できるカードが出たら、どこかに出番があるのかも。とりあえず、絵は綺麗だからモンクなデッキを組むなら(絵的に)必須だよね。


尊いラマスー/Venerable Lammasu

5/4 飛行と、白のわりにはやや頭でっかちなクリーチャー。5/4 飛行で白単色のクリーチャーは、過去には守護天使アヴァシン/Avacyn, Guardian Angelしかいない。アヴァシン君はダメージ軽減能力がついた 5/4 飛行、警戒で、トリプルシンボルの 5 マナ。一方こちらはサイズは一緒で飛行だけついて、白マナは 1 つだけど 7 マナ。色の濃さは違うものの、レアとアンコモンで結構な能力差がついている感じ。リミテッドなら普通にフィニッシャーになれそうだけど、構築では種族ボーナスみたいなものでもつかない限りは、なかなか出番はないかもしれない。

ところで、このラマスーという種族は、これと狩り立てられたラマスー/Hunted Lammasuしか存在していない。いずれも白い大きめの飛行クリーチャーで、羽根のついた水牛みたいな見掛けをしている。ちなみにラマスーとは・・・とか偉そうに書こうとしたら、すでに MTG Wiki のラマスーの項目に、これ以上書くことないくらい詳しく書かれてたのでパス。いやー、いつもながら偉い人はいるもんですよね。

MTG カード与太話: タルキール覇王譚より「灰雲のフェニックス」「焼き払い」


灰雲のフェニックス/Ashcloud Phoenix

フェニックスといえば何度でも墓地から甦ることができる、再生より強力な復活能力と、燃えさかる大鳥の格好いい絵、という恵まれた組み合わせにもかわらず、なぜか MTG の世界ではそれほど活躍できてないという印象がある(注1)。今回の絵はいつにも増して格好良さが増大している気がするものの、はたして実戦でどこまで活躍できるだろうか。とりあえずリミテッドでなら普通に活躍できそうだけど、神話レアだし・・・。先輩の神話レアの炎輪のフェニックス/Flame-Wreathed Phoenixは、それでもリミテッドでそこそこの成績は残してはいる一方で、やはり構築ではなかなか難しかったようだ。

墓地から戻る能力がかなり強力なせいで、コストが高めに設定されているところにフェニックスの辛さがある気もする。まあ、あまり安いとゴブリンの太守スクイー/Squee, Goblin Nabobみたいなことになるからだろうけど。直接ダメージを繰り返し与えられる能力も地味に強いものの、表に向けるのに 6 マナかかる上に、裏向きで死亡してしまうと復活できないという隙の大きさに、使い方の難しさがありそう。ちらつき/Flickerのような変異コスト踏み倒し系のカードと組合せるのかなあ。そういったカードはスタンダードならいくつかあるけど、今のところタルキールのカードには無いから、ブロック構築erには今後のお楽しみということだろうか。


焼き払い/Burn Away

クリーチャーに火をつけて破壊した上に、墓地にそのまま投げこんで全てを焼き払ってしまう極悪非道なカード。裂け木の恐怖/Splinterfrightあたり、よく燃えそうだよね。ゾンビ関連のデッキもよく燃えそう。探査デッキもよく燃える。タルモゴイフ/Tarmogoyfとかルアゴイフ/Lhurgoyfは微妙に燃え残る感じ。

ちなみに、赤単色で相手の墓地だけ吹き飛ばすカードはこれまでには無かったらしい。全員の墓地を吹きとばす(墓地以外も激しく吹きとばす)カードなら、滅殺の命令/Decree of Annihilationとか世界火/Worldfireなんてのがある。これらは墓地対策というより、いつもの赤のスーパーリセット系のカードで、用途は全然違うよね。あと似たようなカードでは、土地カードだけ追放できる泥穴/Mudholeくらいしかない。墓地を吹き飛ばすカードは黒とか白に多かったのに、ここにきて何故か赤単色でこういうカードが出てきたというのは何かの変化の予兆なのか、火力にちょっとした(相当な)オマケを追加しただけなのか、ただのデザイナーの気紛れなのか、気になるところ。